沖合底曳き網漁船(喜栄丸)の操業を主とした壁谷水産株式会社の廃業に伴い商標(深海ギョの魚醤・深海ギョのふりかけ)とともに加工部門を承継致しました。
沖合底びき網漁船より水揚される深海魚の中には、魚の大きさなど市場価値のない、もしくは低いものがあり、水揚されても港に持ち帰ることなく廃棄されるものがあります。
それらの魚を使い、「ふりかけ」と「魚醤」を作っています。今までにない付加価値をつけることで廃棄される魚を少しでも減らしていきたいと考えています。
自然の変化を感じる今日この頃、海も変化しているように感じられます。限りある資源を有効に使っていく事が大切であり、私たちの取組です。
商品は、あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センター(名古屋市)と至学館大学(大府市)共同で開発いたしました。蒲郡在住の管理栄養士、中村萩枝さんにも協力いただきました。
東海3県に6隻ある沖合底曳き網漁船のうち4隻が愛知県蒲郡市の漁港に所属しています。その為、愛知県で水揚げされる深海魚の9割以上が蒲郡で水揚げされています。
蒲郡市における沖合底曳き網漁業は、遠州灘沖や伊豆大島付近と熊野灘での水深250m~400m付近からメヒカリやニギス等の深海魚を対象に漁獲しています。深海魚は、脂が多く新鮮なうちは天婦羅などへの利用価値高いが、鮮度が落ちやすいので鮮魚としての広域流通は難しく、商品価値の少ない小サイズのものは漁場でそのまま廃棄されたりしていました。これらの低利用の魚を「魚醤」や「ふりかけ」に加工して無駄なく有効利用する新規事業を立ち上げました。この新規事業により、貴重な海の資源を捨てることなく有効利することができるようにまりました。
平成29年から商品価値がない未利用の深海魚を有効利用する方法として、自社独自にメヒカリを魚醤にニギスをふりかけに加工する商品開発を目指しました。
製品の開発・製造のためのノウハウが必要なため、あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センター至学館大学及び管理栄養士の方との協同開発に取り組みました。
平成31年1月1日から蒲郡市にある竹島水族館にて販売をスタートしました。その後、販売先をJA蒲郡、道の駅、西浦温泉銀波荘や蒲郡市ふるさと納税返礼品、サンヨネ蒲郡店・高師店・豊川店、イオンモール豊川(メイドイン東海)、マルシェや学校給食にも拡大しています。
小型サイズの利用価値のなかった深海魚が廃棄されている現状に地元ならでの気づき と、市場、小売等の流通経路を介さず、新鮮なまま加工場へ持ち込むという新たな発想を加え、さらに産官学の協力の下に誕生した商品です。
専門家による製造指導を受け、手作りを基本とし着色料や保存料などを添加することなく製造工程を確立した、安全安心にも配慮したものです。
メヒカリ・ニギスの船上選別の流れ
上記図の船上網上げ選別のうち、およそ3割は廃棄することになります。魚体の小 サイズのニギス・メヒカリは、そのうちの1割程です。船上での選別をより丁寧に行うことにより廃棄されることなく、鮮度を保って持ち帰っていただくことができます。
沖合底曳き網漁船の年間漁獲量は、およそ1300tとそのうち廃棄される3割のうち1割が利用価値がなかったもしくは低かった小サイズのものとすると年間40tの資源を有効利用することができると考えます。
令和4年12月以降、魚醬を濾過した後の残渣について(株)ハーツ様(名古屋市)により飼料としてリサイクルされる様になりました。
ヒラメ養殖のえさ、魚粉の代替品試作に取り組まれていることを知りぜひともと希望させていただきました。これにより廃棄物を出すことなく魚のすべてを利用できることができるようになりました。
事業が地元で浸透することで、漁師さんから魚醬に使用する深海魚について提案いただき、この仕事により期待していただいていることを実感するとともに、より多くの漁師さんと連携することにより、限りある資源の有効活用をますます進めていくことができると考えます。